さるたに秘密メモ@はてなブログ

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転清(うたた きよし)・アート・ドット・ワークス 雑感あれこれ

 
先日買ってきた同人誌『転清(うたた きよし)・アート・ドット・ワークス【インタビュー編】』をようやく読み終えました。
 
”ゲームセンターを10倍面白くする本”ゲーメストに常連投稿者からライター兼イラストレーターとして関わり、その後タムテックス、タケル、ミッチェル等のゲームメーカーでグラフィッカーとして活躍した転(うたた)氏の足跡を初夏に発刊された【アートワーク編】と合わせて500ページ超という大ボリュームで辿った本書は、商業的に活気付いていた反面、客もメーカーも流行に流されやすい傾向が強かった90年代のゲームシーンに携わってきたクリエイターの記録として非常に興味深いものとなっています。
 
【アートワークス編】は転氏が手がけたドット絵および原画といったビジュアル面での記録をまとめた構成であったのに対して、【インタビュー編】はその名の通り筆者であるぜくう氏と転氏による対談がメインとなっているために約250ページの大半がテキストという漢気あふれる構成となっており、読む側にもそれなりの覚悟とまとまった時間が要求されますが、そこは本書に取り上げられたファミコンのガチ系アクションや一癖あるアーケードゲームに付き合うつもりで腰を据えて挑みたいところです。
 
経験の少ない若手ながら優れたセンスとゲーメスト時代からの人脈を生かした仕事ぶりを見せたタムテックス時代、カプコン出身の腕利きクリエイターたちに揉まれながら実績を築いたタケル時代、そして四井浩一氏とのコンビでドット職人として熟練の域に達したミッチェル時代と、幾多の会社を渡り歩いて実力を磨いてきた転氏ではありますが、その優れた技術が商業的な成功に結びつかなかったのがビデオゲームという商売のままならないところですね。
 
しかしゲーム会社へ就職するまでCGをほとんど触っていないような素人絵描きが短期間で一流のドット職人へと成長できたのも即戦力が求められる小規模メーカーで実戦経験を積んだからでもあるわけで、何をもって仕事が充実していたかと一概に言い切れない人生の機微を感じる…というのはさすがに大げさでしょうか。
 
資料価値の高さに加えて濃い目のゲームオタクなら読み物としてもガッツリ楽しめる本誌は、『ストライダー飛竜』『鈴木爆発』で知られる超個性派ゲームクリエイター・四井浩一氏のミッチェルにおける活躍を相棒として支えていた転氏の視点で語った備忘録としての側面もあったりします。
転氏がドット職人として卓抜した手腕を発揮したマイルストーンというべき『チャタンヤラクーシャンク』『キャノンダンサー』の両作品は一部の熱心なマニアへ忘れられない衝撃を与えたゲームとして、今でも語り継がれる個性派タイトルとなっています。

 
”他じゃ絶対に出来ないものを創ったなって思いますね。”(転清氏)