青春の格ゲー
昨日あたりから、Togetterの『格ゲーはこのくらい簡単になればとっつきやすい』(http://togetter.com/li/535167)というまとめが話題になってました。
まとめ主の言いたい事は分かるけど、ゲーセンで稼働する対戦ゲームである以上は死ぬほどプレイしまくった廃ゲーマー向けの内容になるのは避けようがない…というのが身もフタもない現実だったりします。
メーカーは何も対策を講じてこなかったのか
単に操作やゲームバランスを簡略化しただけじゃヒットするとは限らないというのは『ポケットファイター』や『キカイオー』をはじめとした幾多の先例がある事から分かるように、メーカー側も初心者向けに敷居を下げようと昔から試行錯誤を繰り返してきた…というのは『ストII』ブーム以降のゲーセンを見てきた古参ゲーマーならご存知の通りです。
『ストII』で確立された格ゲーの文法に沿いつつもマニア向けの先鋭化とは異なるアプローチで多くの新規ユーザーを獲得したゲームといえば、思わず見とれる斬新なビジュアルと複雑なコマンド入力を廃した操作でゲーセンに革命をもたらした『バーチャファイター』、誰もが知ってるオールスターキャストを制限時間が尽きるまでお手軽に大暴れさせられる『スマッシュブラザーズ』、そしてゲームシステムを十数年前のレベルへ回帰させることで最新ゲームから脱落した層をゲーセンへ呼び戻した『ストリートファイターIV』あたりが挙げられますが、いずれの作品もシステムを単純に簡略化しただけに留まらない作り込みと、他の格ゲーとは一線を画したセールスポイントがあったからこそ高評価に繋がったのです。
…とはいえ『バーチャ』『ストIV』並のセンセーショナルなゲームは滅多に出てこないわけで、今ある格ゲーを遊び尽くした廃ゲーマーの更なるやり込み魂を満たそうとすれば、やれる事をどんどん増やしていくというのは、ベストでは無いかもしれませんがベターな方針と言えましょう。
ゲーセンだって商売ですから
「じゃあ一見さんが気軽に遊べる格ゲーもドンドン出せよ!ドンドン!」という意見が出てくるのも自然な流れではあるんですが、そういうゲームが廃ゲーマー向けのものに較べてゲーセンの利益になるのか…という世知辛い問題が出てきてしまいます。
格ゲーに限った話じゃないですが、廃ゲーマーというのは辛くて面倒な練習をコツコツと積み重ね、その分ゲーセンへ時間と金を注ぎ込んでいるわけです。
(身近に廃ゲーマーの知人がいないのでインタビュー記事や伝聞がソースになってしまいますが)
一方「楽しめればいい」派の人たちは、時々ゲーセンへ来て気分よく何ゲームか遊べば満足できる人が大多数でしょう。
ゲームを楽しむスタンスとしては両者に優劣はないのですが、どちらがゲーセンにとって利益になるか、そしてゲーセンへ売り込む立場のメーカーが商売について考えれば誰をターゲットにするべきか…となれば、答えは自明です。
結局のところ、同じ時間内により多くのお金をつぎ込む客へ向けたゲームに偏ってしまうのは、ゲーセンの経営システムを考えると仕方のない事だったりします。
…この結論は目新しいものでも何でもなく、上達すれば1クレジットで数十分遊べる旧来のアクションやシューティングが数分で決着がつく格ゲーに淘汰され、練習がいらない上に数分で数百円を稼げるプリクラがビデオゲームを淘汰したという今までの歴史に沿ったものだというのが自分で書いてて悲しくなります。
ゲーセンやメーカーも、古くはMVS(業務用NEOGEO)や最近のNESiCAxLiveといった省コストなシステム基板の導入や、料金形態の見直しを検討する(※)といった存続への努力を続けてくれてはいますけど、小資本のゲーセンが次々店じまいしていく現状への特効薬は今のところなさそうです…。
(※参考記事:ITmediaニュース『ゲーセンの「時間課金制」検討 消費税増税でバンダイナムコ石川社長』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1307/05/news044.html)
格ゲーを取り巻く事情を考えると…
長々と「ゲーセンにおける」対戦ゲームの現状について書き連ねてみましたが、店の収入が云々って話の大半は家庭用のオンライン対戦では考慮しないで済むんですよね。
回線速度による遅延も光回線が普及してきた現在においては一部の極まった人でもなきゃ気にしなくてもいいレベルに収まっていることを考えると、今後の格ゲーは家庭用を主軸に展開していった方が幸せになれる人が多くなるのかもしれませんね…。