さるたに秘密メモ@はてなブログ

不定期更新。ゲームとか4コマ漫画などなど。

アーケードゲーマーvol.1 雑感あれこれ

かのホビージャパンアーケードゲーム誌を新創刊するということで、発売前からゲーセン者の注目を集めていたこのムック本。実際に読んでみると、DECO特集に石井ぜんじ氏の特別寄稿と公式ページ(http://hobbyjapan.co.jp/arcadegamer/vol1.html)で連呼されているおっさん大人ゲーマーにとっては確かに無視できない一冊でした。
 
しかし本誌の名前をGoogle検索すると吉崎観音氏のマンガばかりがヒットしてしまい、なかなか公式サイトへ辿りつけないのは少々問題じゃないでしょうか
直球勝負な潔さを感じる一方、名詞として一般的すぎる誌名はアピール力と検索性に難があるような…。
 

頭をつかえ!思考型ゲーム

本誌のメインターゲットである年齢層を中心に安定した支持を受けている『麻雀格闘倶楽部』『MJ』といった麻雀ゲームを筆頭にしたネットワーク対戦ゲームの特集記事ですが、巻頭記事がプロ女性雀士へのロングインタビューという構成は誰をターゲットにしてるのかとツッコまずにはいられません。
 
他にも『ボーダーブレイク』『StarHorse3』などの人気作品が紹介されていますが、記事の内容がどうにも当たり障りのない構成なのが正直残念。どうせなら「とにかく面白いから遊ぼうぜ!細かいことはやれば分かるから!」みたいなパッションを読者へ叩きつけるような記事の方が、明らかにニッチ向けな本誌の購読者にはよかったように思えます。
 

俺たちのDECO

※スタッフの安全のため、お名前は全て伏せさせて頂きます。ちなみに、全ての会話に(笑)をつけてお読み下さい。
 
剣呑な注意書きから始まる元データイースト開発陣の匿名座談会は、巷で流布されている数々の伝説へのツッコミやアバウト極まる開発現場の裏話が中心となっています。
 
企画立案当初は製品版とまったく異なるビジュアルイメージで作られていたという『フライングパワーディスク』や、古典作品が原作であってもいつものテキトーさが全開だった『水滸演武』などなど興味深いエピソードが語られていますが、インタビュアーがたびたび「ウィキペディアに書いて…」とか言ってたりするのが少々興ざめ。
「TVすごろく」についてはWikipediaでも少し触れられてた通り、アルカディアの猛者通信で当時の画面写真とともにひっそりスクープされてたんだし、多少は情報の裏を取る余地はあったんじゃないですかね。
 
このDECO特集ではもうひとつのインタビュー記事として『ダークシール』シリーズのメインプランナー・漆原義之氏による開発秘話も掲載されていますが、こちらはインタビュアーも「分かってる」感じで、『ダークシール』以前の作品や、漆原氏の『D&D』ライクな古典ファンタジーRPGへの思い入れが後の硬派DECOファンタジー路線の源流になったエピソードと、なかなかに密度の高い記事でした。
 

石井ぜんじ独占手記 ゲーメストの青春

「ゲームセンターを10倍面白くする本」ことゲーメストで編集長兼名物ライターとして活躍していた石井ぜんじ氏による、創刊当時から新声社倒産に伴う廃刊までの思い出を綴った記事。
 
当時のゲーセン好きにとってゲーメストが市場へ与えた影響は無視できなかったのですが(大げさな話じゃなくて、当時のゲーセン用語の多くがゲーメスト発だった事実に代表されるように、読者でなくても強く影響を受けていたものです)、当のゲーメスト編集部がゲーセンの変質を受けて様々なものを切り捨てていく過程や、対戦格闘ゲームバブルで浮かれる新声社上層部とゲーメスト編集部の確執といった赤裸々な話が、ゲーセンの好景気と衰退にリンクしたゲーメストの盛衰と共に語られています。
 
私は『餓狼SP』の頃から読み始めた比較的浅い読者でしたが、マニアがマニア向けに書いているという良くも悪くもアマチュア的な記事の一方で、隔月刊から月刊へ移行したりメディアミックスを試みたりといった収益を出すための施策といった試行錯誤ぶりは、この記事を見ると実に切実な状況で生まれたものだったと思わずにいられませんね…。

そうした苦労の一端が、全身タイツで「ぜんじ乱舞」を繰り出す編集長の姿に表れている…というのは触れない方がよかったですかね?
 

ゲーセン探訪 vol.1/vol.2

ディープなオタク泣かせなラインナップや積極的な店内イベントで、都内に限らず古参ゲーマーの間で名が知られた『高田馬場ゲーセン・ミカド』、東京板橋区の住宅街に居を構える、子供の頃お世話になりまくったエレメガ群が当時そのままの姿で楽しめる『駄菓子屋ゲーム博物館』といった、どちらも「レトロゲーム」のカテゴリーにありながら両極端な二つの店を同じ誌面で紹介する匙加減は絶妙ですね。
 
『駄菓子屋ゲーム博物館』の「プログラムを改造した世界に一台しかないカスタム版 国盗り合戦」はなかなか興味深いですね。…つーかこれってレジャック(現コナミ)製だったのか。
 

感想とか

大人ならゲーセンだ!なんてキャッチコピーに見られる、ゲーセン全盛期を直に体験した30〜40代の読者へターゲットを絞ったのは実に真っ当な方向性ではありますが、現行機種についての特集が大型筐体ものに偏っていて古参ゲーマーが喜びそうなビデオゲームの扱いがおざなりだったり、レトロゲーム関連の記事は出来にムラがあったりと、色々と詰めの甘さが目立つ構成だったように感じました。
例えば『怒首領蜂最大往生』や『ダライアスバーストACEX』のディープな攻略や考察があったら、かなりのアピールポイントになってたでしょうし。
 
あと、テキスト主体でありながら色使いが派手すぎて本文が読みづらい(特にDECO特集)といった、かつてのゲーメストを彷彿とさせるデザイン上の欠点が目に付く一方で、ページ数の割に値段が高いあたり、全ページフルカラーという構成がデメリットになってしまっている印象は否めません。
 
着眼点の良さに誌面のクオリティが追い付いていない感のあるこのムック。
色々と厳しいことばかり書いてしまいましたが、ゲーセン最盛期世代へ向けたゲーム雑誌には濃くて深い需要があるでしょうから、次号以降で内容を充実させてのリベンジに期待したいところです。